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【法廷遊戯】公で行われる3人だけの秘密の儀式

法廷遊戯

法廷遊戯

  • 永瀬廉
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●あらすじ
ある日、ロースクールの生徒たちにまかれた1枚のビラ。それは同校に通う主人公・清義が起こした過去の傷害事件を暴露するものだった。
いったい誰が、何のためにビラをまいたのか? 同級生の美鈴と結城も巻き込み犯人を追ううちに、事態は新たな殺人事件へと発展する。

 

●感想
正直なところ、主役3人の生い立ちでこの進路は選ばんじゃろ……とは思いました。ただリアリティとか設定の細やかさはさておき、登場人物たちの愛憎うず巻く関係がとてもすばらしかったです。湿度が高くて、控えめに言って最高でした。
なんでサスペンスやホラーが好きかって、非日常的な出来事に直面し揺れる主人公たちの葛藤を追体験したいからでして……そういう点で、私のニーズにぴったりな作品だったと思います。感情のジェットコースターにブルンブルン振り回され、観終わって時間の経った今もまだ、少し余韻にひたっています。
法制度という硬く冷たいイメージと、人の感情という熱くやわらかなイメージとのコントラストが美しい作品でした。

ここからややネタバレ。

結城君が何を考え行動していたのか、もっとつぶさに知りたかった……! 彼には清義君と美鈴さんがどう見えていたのか。結城君目線で物語を追ってみたいです。
彼の行動にはたぶん、お父さんのときみたいに「僕に何かできることなかったのかなぁ」マインドが働いているはず。しかしそれにしたって代償がデカすぎやしませんか。「自分のすべてを投げうたないと清義には届かない」と考えたのか。だとしたら、その思いきりのよさが並外れていてとてもよい……貴い、とすら感じます。

観ている間は「清義君や美鈴さんの結末を見届けたくなかったのかな」と不思議でした。でも彼にとって結果はどうでもよかったのでは、と今は思います。
大事なのは信念を証明すること、体現することで、結果には興味がなかったのでは。もちろん清義君(や美鈴さん)を信じていたというのもあるのでしょうが、結城君にとっての至上は「信念を身をもってしらしめる」ことだったのでは。
だとしたら、ある種の狂気とも呼べることを冷静にやってのけた結城君の精神構造にとてもとても惹かれます。頭の中を覗いてみたい……! 結城君パートがあるかはさておき、その片鱗に触れるためだけでも原作を読もうか画策中です。

清義君と美鈴さんについては、もっと早いうちから腹割って話せればよかったのにねと思いました。そうしたら何かが変わっていたのか……わかりませんけども。
そして美鈴さん役の杉咲花さんがとってもとっても素敵でした。もともと大好きな俳優さんのお一人です。静謐でどこか秘密をかかえていそうな、でも一本筋のとおった立ち振る舞いが杉咲さんにピッタリだったと感じます。

できれば事件とかまったく関係ない世界線での3人のやりとりが見たい。
美鈴さん→結城君は殺意マシマシになりそうですが、結城君はフツーに美鈴さんのことも視界に入れてくれそう。「清義の大事な人」という括りで美鈴さんのことも考えてくれる気がします。